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会報より

楽しんでききたい−音楽のT.P.O・・・・・会員番号 K478 岡部久子

音楽を楽しむのもT.P.Oがあるんじゃないかと思っている。
時と、所と、場合。

私が最初にああ、きれいな歌だなと大いに感じたのが5歳くらいの時の「モーツァルトの子守歌」。女学生のおばが歌っていた。ココバチャンと呼んでいたこのおばは心優しくて、若くて綺麗なままに、22歳で結核で死んでしまったが。

2番の歌詞が特に好きだった。家のうち外/音は静まり/棚のねずみも/みんな眠れば/奥の部屋から/声のひそかに/ひびくばかりよ/ねむれ良い子よ/ねむれよ/(堀内敬三作詞)

棚のねずみも眠るのです。私は子供のくせに夜、なかなかねつけなくなることがあった。寺のおきな松の木でフクロウが鳴いていたりする。いつまでも布団の中でもじもじしていると隣の布団からココバチャンがそっと私の名前呼んで自分の布団の中へ私を入れてくれた。そんな思い出のある「モーツァルトの子守歌」がモーツァルトの作曲でなかったとは!フリース作曲と言われても私にはピンとこない。

次の思い出の曲もモーツァルトでなくて悪い。ドボルザークの新世界。
時は20歳前半。場所は映画館。状況は1人で最悪の気分。どんな映画であったか全く記憶にないが、「新世界」が聞こえてきた時涙が出てきて止まらなくなった。
今でもドボルザークは好きだけれどもう涙はでてこない。だから音楽はT.P.Oなのです。

CDをかけながら本を読んでいたりする。曲がうまく本の内容にあって、しかもそのときの季節、春のおぼろの夕とか湿った雨の午後とか、しんとした雪の夜とかにぴったりと合うと何とも言えない贅沢な気分になってくる。コンサートでからだにじーんと響く生の音楽ももちろんいいけれど、自由気ままな聴き方はまた楽しい。

ところで昨年ンテレビでみた小沢征爾指揮、ベルリンフィルの野外演奏会、ピクニックコンサートと呼んでいたと思うけれど−。ピアノはジャズピアニストのマーカル・ロバーツだった。時は6月末初夏、場所はベルリン郊外。
広い芝生の上には観客は普段着でおもいおもいに座り、子供づれの家族も沢山いる。サンドイッチをつまんだり飲み物を飲んだり、横になって聞いたりと全く楽しんでいる。まだ明るいうちに演奏は始まったが、曲が進むにつれ、あたりはたそがれ、やがて暗くなり、進路を示すあかりと舞台だけがかがやく。その中でジャズピアノが最高潮となる。シンフォニーの人たちもリズムにのって楽しんでいるのがわかる。圧倒的な演奏でした。

ああ、こんな風に音楽を聴きたい。
戸外の生演奏ではないけれど、4年前、航行の暮らし会で十和田湖畔、奥入瀬を周った旅の終わりで出会った音がある。

時は5月。まわりぐるりと緑。木々の中で春蝉がないていた。所は十和田湖畔、小坂町の大川岱。正午をしらせる「樹恩の鐘」が丁度なりだした。
実は案内してくれた人がこの時間に私たちをこの場所へぴったりと連れてくるのには大変なご苦労があったと思うのだ。実に美しい鐘のメロディが緑とさわやかな風の中に響き、一同、感動しました。

「モォツァルト広場」でも一度野外コンサートを開いたらどうだろう。そのときはどんなモーツァルトの曲が似合うだろうか。フルートの曲もいいな。