会報より
私の会員番号の思い出 K413 池田美十里
今までの私の人生の中で、とても大きな影響・印象を残す出会いがいくつかありますが、その中の一人の思い出の曲の一つが、私の会員番号「K413ピアノ協奏曲ヘ長調」です。何だかとても意味ありげな言い方ですが、その人は私が大学2年の時に赴任してきた先生です。東京に在住し演奏家として活躍しているピアニストで、授業にあわせて週に何度も秋田と東京を往復しながら私達のレッスンを受け持ってくれました。ご存知の方もたくさんいらっしゃると思います。大学を卒業後何度か東京の演奏会に足を運んでいますが、秋田でもその演奏を聴く機会に恵まれました。人柄もとても素敵で、演奏を聴くとそれがありありと伝わってきます。今は東京の音楽大学へ勤務になり活躍されています。
当たり前の事ですがレッスンは非常に厳しく、ピアノに向かう姿勢は少しでも気を抜こうものならすぐにお見通しです。(どれだけ泣いたか分かりません。涙を拭くハンカチどころかわざとタオルを持参する先輩もいました。部屋から聞こえる先生の大きな声に、廊下を歩くだけでビクッ!!とします。もちろん原因は私達の練習不足なのですが・・)しかし、レッスン以外の場面でも本当に多くの事を田舎者の私たちに教えてくれました。私の「食べることが好き・美味しいものには目がない」ということは先生が私に教えてくれた音楽以外での大きな一つです。東京から来るたびに老舗有名店のお菓子をお土産に買ってきてくれてレッスンの合間にアフタヌーンティパーティ(!?)をしてくれたり、昼休みにお寿司屋さんランチに連れていってくれたり、家に帰る前にホテルで軽く1杯だけ飲むおしゃれをしてみたりすることは、まだ20歳の私たちにはとても特別なことでちょっと贅沢な時間でした。特に先生が演奏会を終えて秋田に来たときには、たくさんの方から頂いた素敵なスイーツが揃っています。初めてミルクレープを食べたのも、資生堂パーラーのチーズケーキを知ったのも、中華料理店の個室を体験したのも(東京へ遊びに行った時の三軒茶屋でした)先生が教えてくれたことでした。それからずっと私は美味しいものに目がなく常に情報収集中です。
先生はオーケストラのレッスンも持っていて、赴任して初めての年の定期演奏会の曲目がこのピアノ協奏曲でした。もちろんピアノは先生です。弦楽器の学生のほとんどが大学に入ってから始めるので、レベルは本当に低いもので発表会のようなものだったかもしれません。もちろんピアノにリードされっぱなしです。しかし私達にとって、空き時間や昼休みのパート練習など、まるで部活のような生活を送る中で生まれるメンバーの一体感や、曲目への愛着は今でも懐かしく、大学4年間の生活の中で一番心に残る思い出です。そしてこのオーケストラのレッスンを共にしたからこそ、失礼ながら先生も含めて「仲間」だったという気がします。
勤務中にサロンで聴こえてくる有線のBGMでは、かなりの割合でピアノ協奏曲が流れます。耳にする度に、こんな大学時代を思い出します。